10月上旬、フィリピンにはツバメが到着していました

ツバメに付けた足輪の調査から、フィリピンは日本のツバメの越冬地と中継地になっていることが分かっています。そのフィリピンで野鳥調査の用事があって、今月はじめにルソン島の山間部にあるタジャン町というところへ行ってきました。首都マニラの空港に着いてから北部にあるバギオという都市までバスで6時間かかり、そこからさらに車に5時間乗るとタジャン町に着きます。はじめてツバメに出会ったのは、バギオに着いて一夜が開けた10月9日の朝でした。ホテルの6階テラスから見上げると数羽の鳥が素早く飛び回っていて、そのなかにツバメらしい羽ばたきで飛んでいる1羽がいました。帰路の15日に同じ場所で撮影したのがこの映像です。ビルの谷間で視界が狭くすぐに見失ってしまうのですが、何度も行き来してくれたので撮影することができました。

さて、バギオは標高が1500mあり、そこからタジャン町までの道路は最高2000mを超えるような山々を通ります。その途中で小さなドライブインに立ち寄ると、数羽のツバメが飛び回って虫捕りをしているのを見ることができました。道路は谷沿いにあり、斜面を吹き上る風で虫が舞っているのでしょうか。周囲はあまり人家がなく大きな街からも遠いので、夜はどこで寝ているのかなと思いました。人家ではなく、樹木をねぐらにしているのかもしれません。

かつては森林だったこの地域も道路沿いは森がなくなり、山のてっぺんまで農地になっていますが、タジャン町に近づくと森が濃くなってきました。フィリピンはツバメの他にも日本で子育てをしている渡り鳥が冬を過ごす場所で、私がタジャンへ行くのは、まだ森が残っている地域でフィリピンの留鳥や越冬に訪れる渡り鳥を調べるためなのです。

森が多いタジャン町は途中の道路沿いに比べると虫が多いはずで、ツバメが好きな開けた場所もあるのですが、不思議とツバメの姿は見かけず、代わりにたくさんのアナツバメが飛んでいます。アナツバメというのは日本のアマツバメに近い仲間で、ツバメよりずんぐりした身体と鎌形の翼をしている姿は、ヒメアマツバメによく似ています。アナツバメには食用になる「ツバメの巣」を作る種類がいるのが有名ですね。この写真は宿の軒下に巣を作っていたシロハラアナツバメです。私が泊まっていた部屋の窓のすぐ外に巣があったので、外へ回ってスマートフォンを持った手を伸ばすと、巣に届いて内側の写真を撮ることができました。巣はとても小さくて横幅は5センチほどしかありません。その中に小さなヒナが2羽いるようです。

下の写真は同じ建物の別の場所にあったシロハラアナツバメの巣で、大きくなった2羽のヒナが横向きに座っていました。そしてときどき、ツバメのように巣の縁にぶら下がるようにして羽ばたきの練習をしていました。小さな巣なので2羽を育てるのが精一杯かと思われますが、年に何回も繁殖しているのか、それともアマツバメの仲間は長生きだと聞きますから、年あたりの子どもが少なくても、一生のうちにはたくさんの子どもを巣立たせているのかもしれません。

じつはフィリピンでツバメが多いのは平野部で、数千から数万羽が集まる電線ねぐらができます。山間部には少数のツバメしかいませんが、今回の旅では到着したばかりのツバメに出会うことができました。ツバメは日本の巣場所をしっかり記憶していて翌年も戻ってくるのですから、冬のあいだも巣やヒナのことを思い出しているかもしれませんね。(神山和夫)