ツバメが建物の中に入ってしまい、外に出られなくなることがあります。このようなケースでは成鳥より、巣立ったばかりの幼鳥が、巣の近くの建物に迷い込むことが多いようです。
ツバメは明るい方向が出口と考えるようなので、室内を暗くして出口を開けておけば出て行くことが多いのですが、天窓があったり、ガラス張りの建物だと、ツバメはガラス窓のまわりを飛び回り、出口の方へ行かなくなってしまうのです。ツバメには透明なガラスというものが分からないので、そこから外へ出られると思ってしまうのでしょう。
一方で、野外の野鳥が窓にぶつかる事故というのもよく起きています。窓に景色が映っていると、野鳥はそこに壁があるとは思わずにぶつかってしまうのです。ツバメに限らずいろいろな野鳥が衝突事故を起こしますが、このような事故を減らすため、鳥取環境大学の研究者が興味深い実験をしています。

↑外の景色が映ったガラス張りの建物周囲を飛び交うツバメたち
この実験では、鳥取環境大学の構内で2019年6月から2022年7月のあいだ窓に衝突する野鳥の調査を行い、その間の2021年6月から2022年5月の1年間はいちばん衝突が多い窓(実験区と呼びます)に紫外線カットフィルムを貼ったそうです。すると、フィルムを貼っていない期間では全衝突事例43例中25例(58%)が実験区で起きていましたが、フィルムを貼った期間では、全衝突事例18件中5例(28%)だけが実験区で起きました。そして統計的な分析によると、衝突率は減少したと言えるそうです(二項検定、P=0.003)。
この研究では、衝突が減った理由は、紫外線カットフィルムを貼った窓は野鳥がそこに何かがあると認識できるようになるからだと説明されています。鳥の目にどのように見えたかは想像するしかありませんが、フィルムを貼った窓は紫外線以外の光(人の目に見える可視光)だけを反射するので、鳥が見ると、そうでない窓の反射よりも暗く見えるのかもしれません。
この研究は室内から外に出ようとする鳥については実験していないので、ここからは私の推測です。紫外線カットフィルムを貼った窓は人間には透明に見えますが、ツバメには窓の外の景色の色がおかしく見えるのではないかと思うのです。ツバメの目に見える光の波長の一部がなくなるので、例えるなら、人間が見ている光の三原色から、どれかの色がカットされるようなイメージです。もしそうなら、ツバメが迷い込んでしまう建物の天窓などに紫外線カットフィルムを貼れば、ツバメはそこが出口ではないと分かり、正しい出口から外へ出られるかもしれませんから、ツバメが迷い込んでしまう建物があれば、試していただいたらよいかと思います。もちろん、この実験の目的のように、外部から野鳥が衝突するのを防止することの役にも立つでしょう。
(神山和夫)
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↑このような天窓があるとツバメが出口を見失う
※ 市原晨太郎, 小林朋道. 2025. 紫外線カットフィルムは鳥の窓ガラス衝突を抑制するか: 公立鳥取環境大学構内における衝突と対策. 日本鳥学会誌74(2):223 – 241
https://doi.org/10.3838/jjo.74.243


