秋に繁殖したツバメが、春も同じ場所にいた?

昨年の秋に、埼玉県春日部市の道の駅庄和で2つがいのツバメが卵を産みました。そのうち1つがいはヒナを巣立たせ、さらに2回目の産卵までしたのですが、さすがにヒナを巣立たせることはできませんでした。この出来事はバードリサーチニュースに記事を書いていますので、こちらをご覧ください。

秋冬に繁殖するツバメが各地で見つかっている | バードリサーチニュース
埼玉県の道の駅で秋にツバメが繁殖しました 2023年の秋、埼玉県春日部市の道の駅庄和でツバメがヒナを巣立たせました。写真の巣で繁殖したつがいは11月10日ごろに2羽のヒナを巣立たせてから再び産卵し、12月初旬には5つの卵を抱いていましたが(...

今日お話ししたいのは、卵が孵らなかったもう片方のつがいのメスのことです。その子はノドや額の色が白い部分白化のツバメでした。白化がある個体は体が弱いので、このツバメが12月初めに姿を消したとき、もうは冬を越せないかもしれないと心配でした。普通のツバメより動作が鈍いというか、じっとしている時間が長く、あまり動かないツバメでした。

ところが先日、久しぶりに道の駅庄和を訪れたとき、このメスによく似たツバメを、昨年の秋に彼女が寝場所にしていたトイレ前で見つけました。見た瞬間にノドと額が白っぽいことに気付き、さらによく見たいとツバメの前で観察を続けたのですが、首をすくめた同じ姿勢のまま30分も動きませんでした。でも一度だけ首を伸ばしたことがあり、そのときははっきり白いノドが見えました。そして姿勢を変えないまま、突然パッと飛び去ってしまいました。

足環を付けた調査で裏付けられていることではありませんが、同じ場所へ戻ってきているツバメが翌年も胸の模様が同じだったという事例があります。そこで、今回撮影した写真を昨秋のメスの写真と比べてみると、なんとなく似ているように思えます。昨年秋は卵を温めるためにお腹の羽毛が抜けていたので(抱卵斑といいます)、胸の模様の先端付近は分かりにくいのですが。


胸の模様だけではなく、じっとして動かないという性質も似ていますし、もしかしたらあのメスが無事に冬を越して、また同じ道の駅にやって来ていたのかなと思いました。よく確かめたいと、数日後にも道の駅庄和へ行ってみましたが、このツバメを見つけることはできませんでした。もしかしたら今年も渡りをしないで、秋まで道の駅にいるかもしれません。観察を続けようと思います。


神山和夫(バードリサーチ)