シリーズ★2025年のツバメを振り返る②「ツバメにとって恐ろしい鷹、ツミとその対策」

ツミは日本に生息する猛禽類では最小の鳥で、メスはハトくらい、オスはさらに小さくヒヨドリほどの大きさです。全国的には数の少ない種なのですが、首都圏には高い密度で生息していて、丘陵地、都市公園、街路樹などで営巣し、小鳥や昆虫を獲物にしています。

Photo AC より
ツミの分布 (全国鳥類繁殖分布調査報告書より)
赤:繁殖確認 紺:繁殖可能性あり 水色:繁殖期に生息確認

私たちがツバ活をしているエリアでは昨年と今年、ツミが猛威を振るいました。はじめに気付いたのは、ツバメの巣からヒナが消えていることでした。ツバ活をしている場所の巣にはカラス避けのため周囲に約20cm間隔でヒモを張ってあるので、カラスはヒナに近づくことができません。それにカラスならツバメの巣ごと落としますし、ヘビはいない場所なので、ヒナを連れ去ることができるのはヒモの隙間を通り抜けられる小型の鳥だけです。周辺でさえずっているイソヒヨドリも疑いましたが、ある日ツバメの成鳥の羽が散らばっているのを目にして、その食べ跡から猛禽類だと分かりました。

そしてとうとう、ツバメの巣の近くにツミがとまっているのも見つけました。ツバメが集団で営巣していたのは駅前の屋内駐輪場で、本来は外敵が近づきにくい場所なのですが、三方を壁に囲まれた場所は空を飛ぶタカからは逃げにくい閉鎖空間になってしまい、成鳥のツバメまでもがツミに捕まってしまってしまっていたのです。

私たちは少しでもツミに警戒させて、ヒナが巣立つまでの時間稼ぎをしようと巣の周囲にキラキラするリボンを付けたりしましたが、効果がありませんでした。そして悩んだ末に、ツバメの巣を遮光幕で覆ってみました。タカの仲間は獲物を見つけると反射的に襲います。それはネコが動いているものを追ってしまうように、とても強い衝動のようです。そこで巣を隠して、ヒナが見えないようにしてはどうかと考えたのです。

遮光幕はホームセンターの園芸コーナーで購入しました。細いスズランテープで織った布のような構造で、隙間が多いので風通しがよく、明るい側からは中が見えませんが、ツバメの巣の側からはうっすら外が見えています。遮光幕と天上のあいだにツバメが出入りできる隙間を残してあるので、もしツミが天上ギリギリを飛べば中が見えますし、巣を襲うこともできます。しかしツミはもう少し低いところを飛ぶでしょうから、ヒナが見えなければ攻撃本能のトリガーが引かれないのではないかと思いました。

駐輪場を利用する人たちに、ツバメに意地悪をする意図で幕を張ったと誤解されないためようにメッセージも掲示しました。

遮光幕を付けてから、襲われるツバメの巣はなくなりました。ただし同じころにツミの幼鳥が巣立ったり、繁殖に失敗したりして獲物の需要が減り、ツバメを襲いに来なくなっただけかもしれません。遮光幕を付けるとヒナが見えなくなるので、地域の人がツバメを大切にしようという気持ちも減らしてしまう心配がありますが、来年もツミの襲撃があれば、早めから遮光幕を使ってみようと思います。

(神山和夫)