シリーズ★2025年のツバメを振り返る③「今年は巣立った!ラフォーレ原宿のツバメ」

「来年もラフォーレ原宿にツバメが来たら、カラス避けを付けさせてもらおう」と仲間内で語り合ったのは2024年6月のことでした。

原宿の象徴 “ラフォーレ原宿” にツバメがやってくることをテレビなどで見て知っている方も多いと思います。毎年のようにラフォーレ原宿の駐車場でツバメが子育てをしているのです。大型の商業施設や高層ビルに囲まれ、ヒナを育てるのに適した自然環境があるとは言えない原宿の街。400mも飛べば明治神宮の森はあるものの、食糧となる虫の量や種類が少ないのか原宿に営巣するツバメが少ないことが今回一緒に活動してくれた工藤敦子さんの調査でもわかっています。このままではいつツバメが来なくなってしまっても不思議ではない場所です。

残念なことにラフォーレ原宿ちゃん(仲間内で呼んでいるこの巣の愛称です)は、2024年は2回もカラスに巣を壊されてしまいました。従業員の方も次はカラスから守ってやりたいと対策方法を調べヒモ張りの準備をしていたそうですが、ツバメたちは諦めて他所へいってしまいました。

そして今年5月、ツバメはやってきてくれました。さっそく従業員の方にカラス避けの設置について相談をし、承諾いただけました。カラス避けのヒモ張りは全ての卵を産み終えてから行うことにしました。5/29~6/1にかけて3個産卵し抱卵に入ったことが確認されると、さっそくカラス避けの設置に伺い、お客様の出入りもある場所ですのでフン受けも一緒に付けました。

作業中、小さなホワイトボードに描かれたものが目に入りました。巣の前の歩道を歩く子供たちへ、ツバメの状況をお知らせしているそうです。これを楽しみに見ている子供たちの姿が目に浮かびます。素敵な計らいですね。

作業を終え離れたところから見ていると、親ツバメはしばらくカラス避けの周囲をホバリングしていました。ヒモ張りやフン受けの構造を確かめていたのでしょう。親ツバメがヒモの間を潜りぬけて巣に戻るまで、従業員の方が「がんばれ、がんばれ」と応援している姿も印象的でした。皆さんがツバメを大事に思っていることが伝わってきました。

その後、ラフォーレ原宿ちゃんは3個の卵のうち1個は孵化せず、孵化した1羽は小さなうちに落ちて亡くなり、1羽だけが無事に巣立ったそうです。泥が少ししか使われていない浅くて繊維質の巣でした。泥を採れるような土の出ている地面が巣の近くにないのかもしれません。

でも、マイナスなことばかりではありません。何といっても、終日たくさんの人が行き交う賑やかな原宿の街は、ツバメにとって大きな魅力!長い間この巣が引き継がれているのは、活気ある街の中で人と共に暮らし、子育てをしたいと思うからでしょう。ラフォーレ原宿のツバメ、原宿のかわいいアイドルです。

(小川美奈子)