ありがとう、小平駅

今年4月から7月、西武新宿線の小平駅構内でツバメが子育てしました。小平駅はこれまでも外階段の屋根や駅舎裏に巣を作るツバメはいたのですが、今年は改札前の案内看板の真ん中に巣が作られました。私は小平駅を20年以上利用しているのですが、こんな場所に巣が出来たのは初めてのことです。天敵が来ない場所ですので、よくここを見つけなぁと感心します。

そして、駅員さんがツバメに威圧感を与えないように巣の下40㎝程空けた位置にフン受けを付け、「あたたかく見守ってください」とメッセージ付きのコーンを立ててくれました。その対応はとても速やかで、ツバメにも人にも優しいものでした。

6月、一番子が巣立つ頃にフン受けがなんとバードリサーチのものに変わりました。業務中に話しかけては悪いなぁと思いつつ窓口の駅員さんに尋ねると、業者さんに委託し付けてもらったと笑顔で応じてくれました。そして、間もなく3羽のヒナが巣立ち、親鳥は直ぐに2回目の産卵準備に取り掛かりました。

二番子が孵化した頃は35℃を上回る連日の猛暑。小平駅のヒナたちも過酷な暑さに必死に耐えていました。そんなある日、規制線が張られた中に保護され籠に入れられたヒナ2羽が置かれていました。ヒナの安全のため、高い位置に上げることはできないか駅員さんに伺うと、ヒナは既に5回も落ちてしまい、その都度巣に戻していたが、とうとう昨日は1羽亡くなってしまったので下に置いておくことにしたと説明してくれました。暑くて巣から身を乗り出しているうちに落ちてしまったのではないかと思います。

床に置かれたことでヒナをより近くで見られるようになったので、たくさんの人が足を止めて嬉しそうに珍しそうに見ていきます。ヒナの前が見物人で塞がれがちだったのですが、親鳥は「とにかく早く巣立たせなきゃ」と言わんばかりにせっせと給餌を続けていました。すると、駅員さんが「親が餌を運んでくるので立ち止まらないでそっと見守ってください」と書かれた貼り紙をしてくれました。ヒナたちは5日間を床で過ごした後、無事に巣立っていきました。

親子が旅立ってひと月が経った今でも、改札を通る度につい巣に目がいき、ツバメたちを思い出しています。

小川美奈子(ツバノキ)