私たちがカウント調査をしている多摩大橋下流にあるツバメねぐらは、2000年代はじめにその存在が見つかりました。そのころ多摩川では2万羽以上のねぐらが4カ所、千羽以上のねぐらが6カ所見つかっていたのですが(2003-2008年できたねぐらの”のべ数”)、その後ねぐらは減少していき、近年では河口部の六郷に数千羽と、多摩大橋に1-2万羽だけになっていました。
2024年にツバメねぐらが見つかっている地点。上流から最大値は、昭和用水堰上流:5千-1万(7月下旬)、多摩大橋下流:1-2万(8月上旬)、府中四ツ谷橋下流:小規模ねぐら(8/3日没後にヨシ原の上を50羽ほど飛んでいた。最盛期はもっといたと思われる)、六郷:2千-3千(7月下旬 日本野鳥の会 富岡辰先さんの情報)
ところが今年、多摩大橋から4kmほど上流にある八王子市の昭和堰上流に、たくさんのツバメがねぐら入りしているのを見つけました。今年は多摩大橋を通過するツバメの数が最大でも約7千羽(7月24日)で、1-2万羽になった昨年・一昨年に比べて少なかったので、他にもねぐらができたのではないかと思って7月29日に睦橋周辺で観察をしたところ、秋川の方向に飛んで行くツバメが多数見つかりました。そこで、8月8-11日に東秋川橋から秋川・多摩川合流点付近で観察をしたところ、昭和堰の上流100m付近に推定5千~1万羽ほどがねぐら入りしていていることが分かったのでした。
ねぐら入り前の昭和堰上流の河原
ねぐら上空を舞うツバメたち(2024-08-11)
過去2年の多摩大橋ねぐらでは、夕方になるとほとんどのツバメが上流から川沿いに帰還していたようなのですが、今年は多摩大橋を越えてやって来るツバメは少ないものの、ねぐらのヨシ原では目測での推定で2万羽いそうな群れが観察される日もありました。多摩大橋を通過せずにやって来るツバメがいるのかと考えて、ねぐらの下流側や北側で調査してみたのですが、ひとつ下流の橋でのカウントは7月半ばに昨年と同じ450羽前後、ねぐら北側は8月4日に1255羽で、ねぐらに集まるツバメ全体では小さな割合でした。多摩大橋でのカウントと、ねぐら北側や下流のカウント、そしてねぐらでの個体数推定は同日にできないので、日によってやってくるツバメの数が変わっていると、うまく見つけられなかった可能性もあります。
昭和用水堰上流ねぐらは2004年に2.5万羽という記録が残っていますが、その後は大きな数が見られたことはありませんでした。多摩大橋下流はヨシ原の衰退が心配されているので、他にもツバメがねぐらに利用できるヨシ原が残っているのが分かったことで、少し安堵も感じました。今期はすでに多摩大橋ねぐらの数がだいぶ少なくなっていますが、昭和用水堰上流ではまだ大きな群れがねぐら入りしています。二つのねぐらは約4km離れていますが、ツバメは両方を一体として利用している可能性もあると思います。
参考文献
※ 多摩川流域ツバメ集団ねぐら調査連絡会 (2008) 多摩川流域ツバメ集団ねぐら調査報告書. 東京.
ねぐらカウント記録:秋川・多摩川のツバメねぐら入りカウントチーム
文:神山和夫(バードリサーチ)、小川美奈子(ツバノキ)